多摩1キロフェス2015

多摩1キロフェス2015

2015.9.19[土]・20[日]
多摩センター駅〜多摩中央公園1キロのエリア

柴幸男(ままごと)×ウォーリー木下(多摩1キロフェス/フェスティバルディレクター)
「枠にとらわれない演劇を、水上ステージで」

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集団に興味があるのはなぜ?
柴幸男のルーツに迫る!

ウォーリー ままごとで『わが町』という作品もやってましたけど、柴くんは町的なものに、すごく興味を持ってますよね?

 そうですね。

ウォーリー それはどうしてですか?

 何でなんでしょう……。僕自身がわりと小さい「町」で育ったからかな。

ウォーリー どこですか?

 愛知県の木曽川町。今は合併されて、一宮市になっちゃったんですけど。木曽川町は、町立中学が1個、図書館も1個、町役場も1個というふうに、町という単位ですべて完結してたんです。僕にとっては、人間が住む共同体の、把握できる最大のものが町だった。

ウォーリー なるほど。

 それに、木曽川が県の境であり、町の境にもなっていたんです。境が、目に見えたっていうのも大きいかもしれない。この川を渡ると、よその町という感覚がありましたから。

ウォーリー 話を聞いて思い浮かんだのは、西部劇。西部劇の町って、だいたい、ポツンとあるじゃないですか。

 荒野の中に、ポツンと(笑)。

ウォーリー そう(笑)。その町には入口と出口があって、中にはいろんな職業の人がいる。黒澤明の映画なんかもそうですよね。

 そうですね。

ウォーリー 『ドッグヴィル』(ラース・フォン・トリアー監督)という映画は?

 観てないんですよ。興味はあるんですけど。

ウォーリー あれも近くて、倉庫の中に1個町を作って、上からの視点で人々を描いているんです。ちょっと、地図を見てるみたいなんですよね。

 僕のお芝居も、そんなふうに言われることがありますね。人が記号的というか、たぶん人間に興味がないんですよ、僕自身が(笑)。

ウォーリー あははは(笑)。

 興味がないっていうか、書けないんです。一代記とか、人の一生的なものは。そうじゃなくて、匿名性をもたせつつ、記号的に人と人のやりとりを描くのが、たぶん好きなんだと思うんです。人間の細かいところを見始めるとキリがないから、省略して、描きたいところだけを描く。

ウォーリー すごく共感します。たとえば渋谷のスクランブル交差点に、たくさんの人がいますよね? そのひとりにクローズアップしていくと、その人の背景というか、人生や生活が見えてくるわけですが、それはあえて描かない。柴くんの作品は、「そこは観客が想像していいよ」と言ってくれている感じがするんですよね。柴くんの作品の方が、実はすごく人間的で、奥行きがあるなと思う。

 僕も、行き交う人たちを見て、「この人はどんなふうに生きてるんだろう」って想像することはあるんです。でも、本当のことは別に、あまり知りたくないんです(笑)。

多摩1キロフェスならではの
「多摩的憲法のはなし」に

ウォーリー そういう柴くんが、今、東京の下町に住んでるんでしょう?

 そうです(笑)。

ウォーリー 意外なんですよ。下町って、近所の人が玄関を勝手に開けて入ってくる、みたいな世界だと思うから。

 結婚した相手が、江戸っ子なんです。だからこの前も、祭で御輿を担いだりしていて(笑)。人生でそういうことがあるのは、まあ、いいんですよ。

ウォーリー あ、そうなんだ(笑)。

 全部を省略できるかというと、そうじゃないし、演劇をやってると、「この人間臭さがおもしろい!」っていうときもありますからね。そういう意味では、作るお芝居も、記号化できる部分と、できない部分のバランスは考えるようになりました。ちょっとは僕も、大人になったというか(笑)。

ウォーリー おもしろい(笑)。

 今は、僕が書く「老人」という役を、実際に多摩に住んでいるおじいさんが演じてくれたら、すごくいい融合なんだと思ってるんです。匿名性と生々しさのバランスが絶妙にはまると、演劇的におもしろいはずですから。今回は市民キャストも募集しているので、そういう部分には、特に期待しています。

ウォーリー 多摩市民が出ることによって、多摩センターの町も浮き上がってくるかもしれない?

 それはぜひ、そうしたいです。せっかく多摩1キロフェスでやるんだから、多摩の人たちが主人公として浮かび上がるような演劇じゃないとおもしろくない。ぜひ、「多摩的な憲法のはなし」にしたいと思っています。

スイッチを押して
町の魅力を再発見!

―今回は、「ままごと」から生まれた「スイッチ総研」も参加されますね。

 2年前、横浜の「象の鼻テラス」という港の見える公園で、俳優やダンサー、音楽家を集めて、演劇をしたんです。そのときに、紙のチケットではなく、何かを押すと始まるとか、何かを抜くと始まるとか、別の形のチケットにしたらおもしろいんじゃないかというアイデアが出て。そういう「スイッチ」で始まる、短い演劇を散りばめてやるようになったんです。

ウォーリー 僕も観に行って、おもしろかったです。

 俳優たちも新鮮だったみたいで、言われたんです。「これは可能性があるから、団体を作ってもっと追求したい」って。それで今は「ままごと」とは別に活動しています。

—今回、多摩1キロフェスに参加することにしたのは?

 パルテノン多摩周辺には駅もあるし、お店もあるし、マンションもあるし、公園もあるし、遊園地もある。いろんな人たちが行き交っていて、いろんなものが混ざり合っている場所なので、ここだったら、いろんな演劇を、さりげなくいろんな場所に置くことができると思ったんです。

ウォーリー 柴くんは今回、どういう関わりを?

 研究員の一人として、アイデアを出したりはするかもしれません。あと、どうせいるんなら、と、出演させられたりしそう(笑)。

ウォーリー あはは(笑)。

 スイッチ総研は、1時間くらい稽古してもらえれば、誰でも俳優として参加できる。市民が気軽に参加できる、よりハードルの低い演劇としてもいいんじゃないか、という気持ちもありました。

—実際、市民を募集されていますね(7月1日〆切)。

 演劇はきっと、観るより、やる方が楽しいと思うんですよ。つまんない演劇を観るのはつまんないけど、つまんない演劇でも、やってる人たちはけっこう楽しいですから(笑)。もっと演劇を使って、みんなに楽しんでもらえたらと思いますね。

ウォーリー スイッチを押すでもいいし、池に入って、バシャバシャしてみるでもいい。夜の公園で大きな声を出してみてもいい。そういうふうに、ふだんはしないような行為をしてみることで、自分たちの町が、いつもと違うように見えたり、あらためて街の良さに気付いたりする。そんなフェスティバルにしていけたらいいなと思います。

文◇泊貴洋 撮影◇金田幸三

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